発達特性の専門的支援

インタビュー

自分が信じたいものだけを信じる。「スクールシャドー」を通して見えてきたこと Interview #013

「スクールシャドー」という療育スタイルをご存じでしょうか。主にABA(応用行動分析)を用いて学校など集団生活の場面で、支援が必要な子どもの側に影(シャドー)のように寄り添い、集団適応をサポートをする手法です。今回は娘さんのスクールシャドーを始めて2年目になるはっちさんにお話を聞きました。西村佑美先生から「ものすごく明るくて元気をもらえるよ!」と紹介されましたが、本当に前向きで、エネルギッシュで、インタビューが終わるころには日ごろの悩みがどこかへ飛んでいくような思いでした。ぜひご覧ください。

4歳ごろ、ヤギ用の壁にのぼる娘さん。ヤギもびっくり

――娘さんは小学校2年生ですよね。はっちさん自らスクールシャドーをやることになった経緯を教えてください。

(はっちさん)幼稚園の頃の娘は集団指示が通りにくく先生をてこずらせることも多かったみたいなんですが、家では私の言うことも理解していたし、結構落ち着いて過ごせていました。だから、集団生活の中でも家みたいに過ごせれば、あまり問題ないだろうなと思ったんです。就学にあたっては、オルタナティブ教育の学校や発達障害に理解があると言われている私立の学校も検討し、見学に行ったり受験にトライしたりもしました。でも私立小学校はASDには期待していたほどの理解はない印象を私は感じたんですね。もうどこでもいいから受かったら引っ越そうとも考えていましたが、私立の学費と引越しのお金、これからもしばらく続く療育関連の費用が何とかなりそうであれば、公立の支援級でABAのセラピストにスクールシャドーとしてついてもらうのが一番手厚い方法なんじゃないかと考えました。たまたま家の近くの公立小学校は支援級が充実していて特性理解の深度に期待がありました。

ただ、日本では質の良いABAセラピストを見つけること自体が結構大変なのに、さらにスクールシャドーまでやってくれる人を探し出すのが大変で……。そんな中、我が家は就学前にABAの家庭療育を導入していたご縁で、幸運にもとても良いセラピストに出会うことができたんですが、スタンスとしてはペアレントトレーニングを受けた親がメインのシャドーを務めるスタイルでした。だから、最初は週5で私が学校に行き、そのうちの週7~8時間くらいをセラピストの先生に代わってもらうといったやり方で始めたんです。

支援級でも先生の手は足りていない 

――どんなふうにサポートしているのでしょうか?

(はっちさん)娘は脱走癖があったので1年生の時は基本的に教室の1番後ろの窓側の席にしてもらっていました。スクールシャードをする時は抱っこなど家庭でするようなボディタッチを含む親子の特別な関わりはなしです。セラピストと支援対象者ということを心がけます。私は子どもの後ろに椅子を用意していただいて、そこに座って見守りながら、本人や周りが本当に困っている時だけ、小さい声で簡単に短く指示をだしたり、ポジティブな声かけをこまめにしたりする感じです。交流活動の時もそうです。後ろの角の席にしてもらって、その後ろにちょっと立って見ているみたいな感じです。

交流では立ってみんなで活動する時とか、余計なことに気を取られてふらふらどこかに行ったりするんですね。またはテレビのモニターに気を取られて、そちらをじーっと見ていたりして、私が声をかけたり、感覚刺激を入れるとかして意識を戻すみたいなこともあります。必要に応じて寄っていって、耳元で「先生がこう言っているよ」とか、「今何するんだっけ」とか、「周り見て、みんな今何してる?」とか、ちょっと違うことしていたらトントンって肩叩いてみるとかそういう感じです。

――支援級ならそのへんは手厚くやってくれているんじゃないかと思っていました。

(はっちさん)支援級は児童8人とはいえ、先生は他の特性っ子たちも見ていますから。手厚くケアしてくださいっていうお願いをしたとしても、なかなかそうもいかないわけです。特に低学年だとこっちの子のパニックに対応している間に振り向いたらあっちの子とそっちの子が盛大なトラブル起こしていて、さらに別の子が脱走しているとか……。毎日、トラブルやハプニングの連続ですから、マンツーマンで指示を出せばこの子はわかりますと言ったところで、支援級の先生にそんな余裕がなかったりするんです。地域にもよるんでしょうけれど、交流も自分一人で行ける子だけが行ってくださいみたいな感じで、1年生でも先生や支援員の付き添いはなしです。だから、自分の子どもに合わせたサポートを個別にするためとはいえ私が入ることを歓迎してくれました。あんまりこれ言っちゃいけないのかもしれないんですけど、私が支援員の先生みたいになっちゃって他の子を手伝っていることもあります(笑) やっぱり人手が足りなさすぎるんですよね。

他の保護者より学校にいる時間が長いので、色々なことが気になってしまうこともあるのですが、学校や先生に対する苦情や意見はできるだけ控えています。どうしても対応してほしいと思うことや意見したいことがある場合は、「セラピスト」として存在しているシャドーの時間に言うのではなく「保護者」として別途面談の時間を作ってもらっています。

今年2月ごろ、娘さんが描いたイラスト。ブロッコリーは食べるのも大好きだそう

子どもたちの間に入り「練習中なんだよ」

――周りの子どもたちの反応は?

(はっちさん)「何で毎日来てんの?」とかクラスメイトに聞かれても、「(娘が)いっぱい人がいるところが苦手だからさ、ちょっと手伝いに来てるのよ〜」などと言っているうちに、支援級のクラスメイトともみんな仲良くなりました。あとは交流級の子どもたちもいろいろ聞いてきてくれるんですが、同じように説明をして、打ち解けながら、少しずつ理解を得ています。その上でクラス交流の様子を見ると、あの子はすごく面倒見がいいんだなとか、あの子はもともと意地悪な子なんだなとか、クラスメイトの目線で見られるわけです。そうすると、娘がちょっと意地悪な子に嫌なことを言われる姿を見かけても、家に帰ってから「あの子はね、別に相手があなただから言っているわけじゃなくて、みんなにそういう態度だからスルーして大丈夫」などと言えたりするわけです。

娘に特性があるから意地悪されたんじゃないかと思ってしまいがちですが、大人が思うより子どもは特性をからかってきたりすることはあまりないんですよね。「何でちゃんとしゃべんないの?」とか「急に変なこと言うよね!」みたいなことを悪気なく言ったりすることはありますけれど、そういう時こそ近くに自分がいたら「今ね、一生懸命練習してんのよ。みんなみたいに上手におしゃべりできないけど、がんばっているからもうすぐうまくなるよ」とか言ったり。「いっぱい話しかけてくれると、もっと早く上手になるかも」とか「うるさかったら、優しく言ってくれればわかるよ」などとちょっと間に入ってあげることもできる。そうやって今ではお友達と帰りに一緒に帰って来るようにもなりました。

――登校から下校までずっとスクールシャドーとしてついているのでしょうか?

(はっちさん)1年生の時はそうでした。お弁当を持って行って1日中過ごしていたからずっと子ども達に先生って呼ばれていましたね(笑) 「何で先生だけサンドイッチ食べてるの?」とか言われて。先生じゃないんだよ、〇〇ちゃんのママなんだよ。だから私の分の給食はないんだよ、みたいな話をしたりしています。

あ、そうそう。登校でも入学式の次の日からシャドーをしていました。娘の4~5m後ろをついていく感じで特別な時を除いて、娘の横を歩かないようにするんです。1年生の時はランドセルが大きく見えるし、一生懸命歩く後姿が健気に見えて、何度も隣を一緒に歩きながら励ましてやりたいと思いましたが、シャドーは登校時から始まっていますのでグッと意識をセラピストに寄せて親も一緒に頑張るんです。

2年生になった今は、1日の中でイベント的なものがある場合と交流活動ではシャドーしていますが、だんだん私の出番も少なくなり、今では週7~8時間くらいを私とセラピストで分担しています。最近は朝、1人で学校へ行きたいと言うので、ほとんど1人で登校しています。1年のシャドーを通じて、登校は一人でも大丈夫!という自信が親の方にもつきました。

2歳ごろの娘さん。多動で道路に飛び出すこともあったため、自由に走り回れるこの公園に週1で連れて来ていたそうです

――スクールシャドーを提案した時、学校側はすぐに受け入れてくれたのでしょうか?

(はっちさん)細かい資料を作って、こういうことをしたいんですという説明をしました。でも先生方もスクールシャドーが何やら……ということがあまりよくわかっていない感じで、ギリギリまで返事がもらえませんでした。体験入学の時に校長先生に直接尋ねたら、「お子さんのことが最優先なので、付き添いはお母さんのご判断でどうぞ」と言われました。実際、療育的な関わりをするのは自分の子だけですし、シャドーではなくいわゆる「付き添い登校」が必要な子も他のクラスにはいたので、先生も嫌な顔はしませんでしたね。

時には一緒に教室の床に寝転がりながら

――娘さんはどんなお子さんなんですか?

(はっちさん)癇癪はなかったのですが、小さい時は本当に脱走というか衝動がすごくて、ADHDなのかなとは思っていましたね。幼稚園でも暴れるわけではなくて、衝動性が強くてどこかに行っちゃうというのが問題でした。小学校でも脱走はあって、上級生が授業で育てているミニトマトを衝動にまかせて採っちゃうようなこともありました。言葉の表出が弱めなので国語は苦手ですが、テストは頑張っています。算数のテストは、2年生になってから100点を2回とりました。私も主人も娘のことはひたすらもう、可愛い可愛いで育ててきて、愛されキャラというか、そんな感じです。

――はっちさんは悩むよりも、娘が可愛くて、この子をどうすればいいかという前向きな感じだったんですね。

(はっちさん)そうですね。だから私、周りの人にいろいろ言われても、娘にそんなに問題があると思わないってずっと思っていました。でも集団の中にいる娘の姿と、家にいる娘の姿はやっぱりちょっと違うんです。集団生活で荒れたりすることもあって、こういうことを指摘されていたんだなっていうのが就学のちょっと前くらいに分かりました。それはその頃に出会った佑美先生の勧めで受験にチャレンジしたから分かったんですけど、それなら娘にはスクールシャドーがきっと合っていると思いました。

これも今年2月ごろに娘さんが描いたイラスト

――今、悩んでいる方々へ何か助言はありますか?

(はっちさん)親は子どもの良いところ、信じたい部分だけ盲目的に信じてもいいのではないでしょうか。専門家に何か指摘されたとしても、自分が信じないと思えば信じなくてもいいと思うし、なんなら、私は障害受容なんてしなくてもいいと思っています。ただし、そこには客観的に自分の子どもを見る目が必要です。子どもの言動をよく観察して理解し、必要な部分には、手厚く対応しなければならないと思います。診断や発達検査の結果は外部の協力者を得るためのただの必要書類と思っていればいいと思う。実際、良くも悪くも成長と共に診断名が変わったり、発達検査の数値が変わったりした人もたくさんいます。

不安になることも多い子育てですが、目の前の子を知るためにとことん子どもの目線に立ってみてはどうでしょうか。なぜこんなことをするのか?入学当初、感覚過敏のせいか娘は教室の床に寝そべってボイコット状態になってしまうことがあったんですが、ある時、私も一緒に寝転んでみました。そうすると、ああ、床がひんやりして確かに感覚的には気持ちいいな…クラスメイトや先生の顔が視界から消えてちょっと気分が変わるな…ということがわかりました。でもみんなが見ているし、今は変だから立とうか、みたいな。そんなふうに目線を同じにすると、怒ったり悩んだりするよりも先に見えてくるものがあるかもしれません。

※スクールシャドーへの考え方や受け入れに関しては学校ごとに多様であり、早めに担任と支援コーディネーターの先生と相談しながら進めることが必要です。また本インタビューは、ご本人の表現を優先して掲載しております。

文:井上仁周

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