VARYメンバーの子育てエピソードを聞くこの企画、西村佑美先生に次ぐ回は西日本に在住のM・Kさんのお話です。息子さんが2歳の時に自閉スペクトラム症と軽度知的障害と診断され、保育園を辞めて週5回療育園に通っていましたが、年長の今春から幼稚園へ転園することを決めました。もっと違う未来を考えてみたい━━━ そう思った時に出会ったのがVARYだったといいます。インタビューをしたのは同じくVARYメンバーのライターAですが、子どもの発達特性から目をそらさなかったM・Kさんの姿勢に驚きました。たくさん悩み、それでも前に進んできたこれまでのお話を聞かせていただきました。
2024年夏、家族で沖縄へ。4日間プール三昧で、子供達は大はしゃぎだったそうです=M・Kさん提供
コミュニケーションに問題がなかった長女と比べると…
━━━現在は6歳になる息子さんですが、発達が気になったのはいつごろでしたか?
(M・Kさん)1歳半検診がきっかけです。質問票を見ながら、この子は話しているのだろうかと。「おいしい」や「ママ」などの言葉はあったものの、よく考えると目線が合わないことに気付きました。これはまずいかもしれないと。その頃は起業してものすごく仕事を頑張っていた時期で、息子の発達の遅れに全く気が付かなかった。仕事に没頭しすぎていた自分をダメな母親だと感じて落ち込みました。
ただ、当時はコロナ初期の2020年で十分な対応はできず、1歳半検診でもスルーされてしまいました。でも気付いてしまっているから、すごく不安だったんですね。自分から専門機関に問い合わせて相談し、検査を受けて、自閉スペクトラム症と軽度知的障害という診断が出ました。2歳になってすぐに初診の予約をして、最終的に診断がついたのが2歳4ヶ月頃。比較的早い段階だったと思います。
━━━行動力がすごいですよね。その年齢だとまだ様子を見ましょうとも言われそうです。
(M・Kさん)上に娘がいるので気付けたのかもしれません。お姉ちゃんも多動など似たようなところはありましたが、コミュニケーションには問題がなかったので違いを感じていました。それと、親戚に自閉スペクトラム症の子がいてすごく大変そうだったのを見ていたことも大きかったと思います。何か手を打てるなら早く打ちたい。とにかく早く専門家につながって、早期療育をしようと思いました。
━━━診断がついた時はどんな気持ちでしたか。
(M・Kさん)息子は全然話せないし、話しても一方通行だったりするので、そうだろうとは思っていたけれど……知的障害もあるとは思わなかったのでショックでした。実は年長の今では成長して知的障害ではなくなっています。でもこの時は知的障害の診断があったことで、その後の療育につながりやすかったという点がありました。すごく迷いましたが、保育園を辞めて週5回の療育園に通い始めました。
━━━療育園はいかがでしたか?
(M・Kさん)身辺自立にはすごく良かったです。保育園では1歳児クラスの時にトイトレを諦められてしまっていましたが、療育園では1〜2カ月でできるようになりました。ここには年中まで3年間通っていました。ただコミュニケーションを学ぶというよりは、時間になったらトイレに行きましょう、時間になったら食べましょうというルーティンを覚えさせるような場所だと感じました。
2021年夏、まだ発達特性に気づいていなかった頃。「海を怖がらず驚きました。今思えば、水が大好きなのも特性でした」とM・Kさん=提供写真
勇気を出して、療育園から幼稚園へ転園
━━━年長の今春から療育園を辞め、幼稚園に通うようになったんですよね。きっかけは?
(M・Kさん)療育園に物足りなさを感じるようになったことです。基本的に発達特性がある子は支援学校や支援級に通った方が良いという方針で、情報収集もしにくかったんですね。もう少し違う未来を考えてみたいと転園を考えていた時にインスタグラムでVARYを知りました。佑美先生は前向きな未来を話しているのが良かった。個別コンサルをしてもらって、息子のアイコンタクトに課題があることなどを知ることができました。
児童精神科の医師も療育の先生もなかなかはっきりとは言ってくれない中で、佑美先生は、息子がもっとコミュニケーションがとれるようになったら大丈夫と言ってくれた。その通りで、今では知的障害は外れました。他にもたとえば学校で勉強ができなくてもアートの道で花開いて活躍する人もいるとか、本当にいろんなことを教えてくれました。「大丈夫、大丈夫」と言ってくれる存在は本当にありがたいですよね。
━━━子どもの障害から目をそらさずに対応していることがすごいと思います。私は見ないふりをした時期があったので……。それでもすごく悩んだり、お子さんの存在をつらく感じたことはありましたか?
(M・Kさん)やっぱり将来が不安になったりします。たとえば先日、幼稚園の参観日があったのですが、うちの子だけ寝転んで話を聞いていて。他のお母さんたちからどう見られるのだろうと落ち込みました。年長だからもう他の子たちはみんなけっこうしっかりしているんですね。その中で、グループで話し合うような場面でもうちの子だけ「この色がいい」と言って譲らなかったりする姿があって、このままどうなるんだろうと。来年は小学校なのですが、そのような姿を見ると悩みます。
その前もずっと大変でしたけれど、いろいろ忘れていきますよね(笑)でも、私が一番泣いてメンタルが病んでしまったのは療育園に行き始めた時でした。息子よりもずっと障害が重い子たちもいる中で、他の子はしっかり座って課題に取り組んだり、先生の言うことも聞いていたのに、息子は一切参加できない時期があって。教室の隅っこにしゃがんで、僕はやらないみたいな。そういう姿を見ていると、なんでうちの子はできないんだろうと比べちゃって、今思うと一番つらい時期でした。
2024年秋、母・娘・息子の3人で飛行機に乗って帰省。問題なく飛行機に乗れて成長に感動したそう=M・Kさん提供
━━━そんな息子さんも変わってきたんですよね。
(M・Kさん)佑美先生から学んだ肯定的な注目やナレーションをするようになってから、私の言うことをとても素直に聞いてくれるようになりました。何より私が息子のことをとても愛していることが伝わるんです。ママが好きだから一生懸命頑張るという感じが見えてきて、親子の信頼関係ができてとても良かったと思います。今は私と息子との信頼関係をさらに深めて、そこから幼稚園の先生たちにも広げていく段階ですが、そのファーストステップのところがしっかり築けていると実感しています。療育園を出るのにすごく勇気が要りましたが、次のステップに行くことができて良かったです。
一人でリフレッシュより、子どもたちと一緒に成功体験を
━━━息子さんの良いところを教えてください。
(M・Kさん)けっこう素直な、すごく良い子だと思います。ごめんなさいもちゃんと言いますし、細かなことでも助けてと言える。どこに行ってもよくこの子はかわいいねと言ってもらえます。本当に頑張ってやってきて良かったなと思っているところです。あとは、お絵かきや工作が大好きでいつも大作を作っています。これからそういうものを活かしていけたらいいなと思っています。
━━━子育てに悩んだ時はどう切り替えていましたか?
(M・Kさん)子どもがもっと小さかった時は、毎週木曜日の夜は一人で外出すると決めていました。スーパー銭湯に行ったり、カフェに行ったり、自分の好きなことをして。あと数か月に1回は1人でホテルに泊まっていました。今思うとけっこう破天荒な感じですが、でも両手を伸ばして寝ることできるのはとても良いですよね。翌朝の朝食ビュッフェを楽しんで、すごくリラックスできました。そうやって自分のための時間を作っていました。
子育ては大変だし、特に療育園で嫌なことがあったりすると、子どもと距離を置いてリフレッシュしたいという時期がありました。でも今は子どもたちと一緒に成功体験を重ねるということが楽しいんです。たとえば去年は鹿児島に帰省したんですけれど、その時に1人で子ども2人を連れて帰るということもやってみたりしました。2人を連れて外食に行って、こんなお店にも行けるようになったとか。次は私1人で子どもを連れて海外旅行に行くのが夢です。やっぱり自分1人だけで旅行や外食をしても楽しくない、子どもと一緒に楽しみたいと思うようになりました。
━━━もし今、自分の子どもをかわいいと思えなかったり、「なぜ我が子だけ」と思っている人がいるとしたら、どんなことを伝えたいですか?
(M・Kさん)本当に親は大変だと思います。でも、親が変われば子どもが変わっていくというのが私の実体験としてあります。全然コミュニケーションがとれなかった息子が、「ママに褒められたいからやる」と変わったのは驚きでした。あのまま放置していたら、そうはならなかっただろうなと正直思っています。
コミュニケーションが取れない時はムダだなと思っていた時期もありましたが、それでも一生懸命話しかけたりしていたことも良かったなと思います。言葉の発達が遅かったので、テレビは付けないで、1日20冊くらい絵本を読んでいた時期もありました。正直それを聞いていたかどうかわからないけど、母親としてできる限りのことを一生懸命やった、やりきったという感じがあって。そんなふうになるべく向き合う時間を作るといいと思います。逆に言うと、上のお姉ちゃんにはあまりできなかったことを、息子にはすごくしっかりしてあげられた。そんなふうにも思っていて、自分をほめたい気持ちです。
文:井上仁周
子ども発達支援アカデミーVARYでは、障害の診断の有無は関係なく、発達特性が気になる子を育てる親御さんが子どもとのかかわり方を学べる場を提供しています。現在VARYメンバーは海外含め全国各地から参加され約120名、佑美先生から学べるのはもちろん、同じように悩む先輩ママたちの話も聞けます。また、発達特性があるからこそ親子で強みを見つけるアートプロジェクトが立ち上がるなど活動の幅も広がっています。佑美先生に直接お子さんの発達のことを相談したい方、お子さんの発達特性を活かす子育てをする仲間を作りたい方はぜひ入会をご検討ください。きっと発達特性を活かした子育てができるようになり、お子さんのことを大好きになれますよ。 ※次回会員募集は7月頃を予定しています。 |