発達特性の専門的支援

インタビュー

「悩んでいる時間がもったいない!」アイコンタクトで心が通い合うようになった経験談 Interview#007

2025年夏。家族で郡上八幡へ。「最初は水が冷たいことに驚いていましたが、慣れると大はしゃぎの川遊びでした」=Aさん提供

お子さんの発達特性に気付いた時、将来を悲観してどんどんネガティブになってしまう親御さんも少なくないでしょう。

しかし、そんな風に落ち込んだり、他の子と比べたりする時間はもったいないかもしれません。親が前向きにお子さんに関わることで、成長を促すことができるからです。

今回の記事では、「誰も信じられない」「相談するのが怖い」と思っていた中でVARYに出会い、前向きにお子さんに関われるようになったAさんにお話を伺いました。

指摘を受けるとは思っていなかった一歳半検診

━━━お子さんが何歳くらいの時に発達特性に気づきましたか?

 (Aさん)一歳半検診の時に、落ち着きがないのと、指差しがないことに対して指摘があり気付きました。ただ、一歳半検診の少し前までは言葉もパン・うどん・パパなどの言葉が出ていました。そのため、言葉についても気にしていなかったのですが、一歳半検診の後、減っていることに気がつき、不安が押し寄せてきたことを覚えています。

2月に一歳半検診があったのですが、1月に私の両親が遊びに来てくれて、みんなで公園に行った事がありました。その時に、息子と同い年ぐらいの女の子が、公園でこけて泣いてたんです。それを息子が「大丈夫?」と近寄る姿がありました。知らない子だったんですか、その子のお母さんに「優しいね」と言われて、こんな風に優しく育ってくれて嬉しいなと思っていたことを覚えています。

 ━━━そこまでコミュニケーションが取れていたら、一歳半検診で指摘を受けるなんて思いませんよね。

 (Aさん)そうなんです。よく「発達がゆっくりで一歳半検診を受けるのが怖い」という話も聞きますが、当時のわたしはそのような感情はありませんでした。

一歳半検診をした施設に児童館があり、よく遊びに行っていました。息子は児童館にある階下に行こうと落ち着かなかったんですが「児童館に遊びに行きたいから落ち着かないんだ」ぐらいにしか思っていませんでした。一歳半検診では、半年後にもう1回来てくださいと言われました。

そんな風に言われて、一気に心配になってしまいました。どうすればいいのか、インターネットで調べ「こういう行動をする子は発達障害だ」と書かれていることが、当てはまるような気がして……。怖くて、誰にも相談できなくなくなってしまいました。

数ヶ月後、保健師さんが家にいらした時に「ここに絵を書いてね」と息子に紙を渡したのですが、ペンを投げたりして全く指示に従いませんでした。

ますます不安になって、色々インターネットで調べてる中で、佑美先生のSNSを見つけました。

佑美先生に相談をして「悩んでいる時間がもったいない!」と思えた

2021年夏。小さい頃から水遊びが大好きでした。=Aさん提供

 ━━━佑美先生のSNSを見つけたのはお子さんが何歳くらいですか。

 (Aさん)1歳10か月ぐらいでした。すぐにオンラインの個人面談をお願いしました。

当時は、プロの方でも子どもの発達特性に関してマイナスな発信も多かったように思うのですが、佑美先生はプラス思考な発言が多かったのが印象的です。むしろ「発達特性を活かすことができる」というようなポジティブな発信もあり、私に必要なのはプラスの言葉をかけてくれて、それを実体験された方だと思いました。

「この子はわがまま王子様だから、こんな行動をするんだよ。でも甘やかしちゃいけないよ!ちゃんとわかってるから」みたいに、大切なことを面白おかしくしてアドバイスしてくださいました。言葉が少なかったり、ずっと動いたりしてるからといって、何もわかっていないわけではないと丁寧にお話いただきました。

佑美先生は「落ち込んでる時間がもったいない」と思えるように私のマインドを変えてくれたのです。

━━━確かに、発達特性の子を育てるためには、まず母親のマインドを整えるのが大切ですよね。その他に受けたアドバイスで印象的なことはありますか?

 (Aさん)とにかくアイコンタクトを強化するように言われました。アドバイスを受けてすぐに取り組んだところ、2~3週間ぐらいで名前を呼んだら振り返って私のほうを見てくれるようになりました。

それができるようになってよかったと感じていた時に、期間限定で義理の両親と同居することになりました。私も一生懸命になっていましたし、家族も良かれと思い息子にたくさん話しかけていたのですが、大人4人からの声かけが本人には負担になってしまったんでしょうね。少し後退してしまった時期もありました。

それでもアイコンタクトの練習を続け、いまでは私が呼んで反応しないことはほとんどありません。2歳児の時に療育園に入ったんですが、年少の初めぐらいから療育園の先生に「目がだいぶ合うようになってきたね」と言ってもらえるようになりました。

 ━━━他にはどんな変化はありましたか?

(Aさん)ちょうど2歳ぐらいの時に、佑美先生からおすすめの療育施設を紹介してもらいました。実費で通うところでしたが、佑美先生に気軽に会える場所に住んでいないこともあり、息子について信頼して話せる人を近くに作ってもらったのも、ありがたかったです。

「私が不安な顔をしていたら、それが子どもに移るよ」と言われたので、目を見て笑い合える時間を作ろうと思いました。お布団が好きだったので、一緒に寝室で遊んだり、そこの上で一緒に寝転がって本を読んだり、歌を歌ったり、難しいことを何にも考えずに遊ぶ時間を作った方が良いとアドバイスをいただきました。一緒に楽しんでいる内に、声をかけなくても目が合うことが増えました。

息子をサポートしてくれるはずの人を信じられず絶望

━━━いままでに大変だったと感じるエピソードがあれば教えてほしいです。

(Aさん)私のことなんですが、自治体の療育に携わる人たちとのやり取りですごく落ち込むことがありました。

自治体が運営する月1回の療育を案内され、計4回そこに通うように言われました。1回目の時に、そこにいらした臨床心理士の人に「この子は人に興味を持ってる感じだから保育園に行くと良いと思う。きっと馴染むよ!」と言われました。それが8月の終わりで、保育園の締め切りは9月だったので、夫にも協力してもらいながら急いで保育園を調べて、書類を用意し、申し込む準備をしました。

それなのにも関わらず、保育園に申し込むタイミングで先ほどの臨床心理士さんに「お母さん、この子保育園とかじゃないよ。まず療育園に通わないと」「お母さんが思ってるほど、この子はわかってないから」って言われました。

━━━保育園に申し込む場合、調べて、予約して、見学して、すごく時間も手間もかかりますよね。それなのに、そんな対応をされると悲しくなりますね。

 (Aさん)「前回のアドバイスを聞いて保育園探しをしたんですけど」とその人に伝えても「仕事してる場合でもないし、この子お母さんの言ってること(お母さんが思うほど)わかってないから」と言われてしまい、そもそも保育園を勧めたことも覚えていないようでした。

その日は夫も仕事を休んで一緒に来てくれていたのですが、その対応に驚き怒っていました。この場所で家を建てて、生活することも決まっているのに、息子のことをサポートしてくれるはずの人が敵に見えました。

しかも、市役所の保健師さんたちも、何か相談があれば、その臨床心理士さんが相談に乗ってくれますよと案内しており、その組織の中で1番知識がある方のようでした。

そのことを佑美先生に相談したら「わかってない人のことはもう信用しなくていい」という風に言ってくれました。佑美先生のように自分の味方になってくれる素敵な人もいるってことはわかっているのですが、自分の地域で息子を見守ってくれるはずの人を信用できなくて、絶望しました。

━━━佑美先生は他人事ではなく、親身になって教えてくれるから信用できますよね。結局どんな進路を選びましたか?

(Aさん)夫と話し合い、準備をしたことだし、話が変わる人のことは信用しなくても良いとなり、2歳児の時は、保育園と療育を併用しました。

その後も、息子に合った環境をと思い、保育園に通いながら療育園にも通うようなスタイルに変えるなどしています。次は年長ですが、これからの進路もどうしようか考えている所です。

アイコンタクトでコミュニケーションの楽しさを感じられるように

2024年秋。家族で山梨旅行へ。追視が苦手な息子さんが池の鯉を目で追いかけるのを見て成長を感じたそうです。=Aさん提供

━━━ここ1年くらいで、お子さんが成長したと感じたことを教えてください。

(Aさん)アイコンタクトをずっと頑張ってきたら、共同注視ができるようになってきました。まだお話はそこまでできない子なんですが、一緒のものを見てなんとなく共感できるようになっています。

あと、アイコンタクトにこだわったおかげで、息子は目を見ながら主張しないと欲しいものがもらえないことを理解していて、必ず目を見て主張します。これは、私にだけではなく、他の人にも目を見て訴えることができるようになったので、療育園の先生や保育園の先生もきちんと対応してくれるようになりました。

佑美先生に教えてもらった肯定的な注目(子どもの行動をよく観察して褒めること)も続けています。息子のことをいつも見てるのをわかってるので、息子も他者をしっかり意識できるようになってきていると感じます。

交わす言葉が少なくても意思の疎通ができるようになったのは大きな収穫ですし、就学に向けてより強化していきたいと考えています。

 ━━━最後に、お子さんの発達特性に気付き、今悩んでいる親御さんにメッセージをいただけますか?

(Aさん)お子さんの発達特性に気付いた時、塞ぎこんだり、ネガティブなことを考えたりしてしまう人もいらっしゃると思います。私自身もネガティブになってしまった時期もありますが、ぜひ視野を広く持ってほしいです。

(その時の自分にとって)嫌な言い方をしてきたり、受け入れ難い事を言葉を選ばずに言ってくる人もいると思いますが、そういう人ばかりではないことに気づいて欲しいです。地域の専門家を頼るのだけが正解ではありません。

佑美先生は、診断とか発達検査の数字とかにこだわらず、目の前にいるその子と向き合うことが1番大事だといつもおっしゃっていますが、私もその通りだと思います。

こんな風に、やっぱり肯定的に捉えてくれる人がいるので、「この人の言葉は信頼できない」と思ったらどんな肩書きを持った人であっても無理に頼らなくても良いと思えるようになりました。そして、自分の信頼する人から教えてもらった”今やるべきこと”に集中することで、前向きに息子に向き合えるようになっています。

落ち込んでいる時にもできることはあるので、話を聞いてみたい、信用できると思った人に出逢えたら信じて前に進んで欲しいです。笑顔で過ごすことが増えるきっかけになると思います。

(文:勝目麻希)

子ども発達支援アカデミーVARYでは、障害の診断の有無は関係なく、発達特性が気になる子を育てる親御さんが子どもとのかかわり方を学べる場を提供しています。現在VARYメンバーは海外含め全国各地から参加され100名を超えており、佑美先生から学べるのはもちろん、同じように悩む先輩ママたちの話も聞けます。また、発達特性があるからこそ親子で強みを見つけるアートプロジェクトが立ち上がるなど活動の幅も広がっています。佑美先生に直接お子さんの発達のことを相談したい方、お子さんの発達特性を活かす子育てをする仲間を作りたい方はぜひ入会をご検討ください。きっと発達特性を活かした子育てができるようになり、お子さんのことを大好きになれますよ。

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