今回お話を聞いたのはRさん。西村佑美先生によると、当初は本当に表情が暗かったそうですが、個別相談を重ねるうちに見違えるほど明るい笑顔を取り戻し、VARYを卒業していったそうです。
小学1年生になった息子さんは支援学校ではなく、地域の小学校の支援級に通うという選択をしました。Rさんがそんなふうに考えることができるようになった理由を、同じ小1の子どもを持つライターが取材しました。

3歳のころ遊び場で、大きなぬいぐるみと息子さん=Rさん提供
言葉が出なくても理解している……東田直樹さんを通して知ったこと
━━━息子さんについて教えてください。
(Rさん)小学校1年生の男の子で、ASDと軽度精神発達遅滞と診断されています。1歳くらいから目が合わないなど自閉の傾向に当てはまることが多く、何か周りの子とちょっと様子が違うなと思い始めました。落ち着きがなく、後追いも全然なくて。1歳半検診でも他の子ができるようなことが全然できず、2歳から市の児童発達支援センターに通い始めました。
当初はまだ「私のことをお母さんだと認識しているのかな?」という感じでしたが、通った2年で発語も出て、もちろん私のことをお母さんだと分かるようにもなりました。
━━━佑美先生のところに相談に行ったのは?
(Rさん)年中の夏休みです。Instagramを通じて、ちょうど地元で相談会があると知って参加しました。アイコンタクトの練習をしていきましょうといったアドバイスをもらい、相談会のあとにVARYに入って個別相談もしてもらっています。
VARYで重度知的障害の子のセミナーのような会があったんですが、そこで(『自閉症の僕が跳びはねる理由』著者の)東田直樹さんについて知りました。言葉が出なくても理解をしている人がいるんだなと。息子も発語が遅いのですが、私はそれまで赤ちゃん向けの本を読んであげるなど、1歳や2歳の子にするような関わり方をしていました。
佑美先生に息子を見てもらって、発語だけが伸びていないけれど年齢相応の理解力は持っているから、それを理解して関わってあげてと言われたんです。それで絵本も年齢に応じて発展させたところ、発語はまだでも、理解力はすごくあるんだなと感じるようになりました。
━━━そこから就学先の見通しも変わったんですね。
(Rさん)主治医の先生は「支援学校相当の子だよね」と言っていて、私も年中くらいまでは発語がまったくなかったので重度の子なんだろうなと思っていました。支援学校以外の選択肢がないと思っていたのですが、佑美先生の個別相談を通して、理解力があるのに限定的な関わりをするのはもったいないなと。
私の関わりを変えたことや、療育先も変えたことがあって、ものすごく伸びていたんですね。そうしたこともあって、教育委員会からは支援学校の判定ではありましたが、地域の支援級に入れることにしました。やっぱり可能性がすごくあるんだなと感じて、希望も持てるようになっていったからだと思います。
━━━実は私の子どもも教育委員会の判断と別の選択をしたのですが、勇気が要りました。Rさんは強い気持ちでいられたのでしょうか?
(Rさん)他の親御さんは教育委員会から「どうなっても知りませんよ」みたいなことを言われたそうですし、私ももちろん圧を感じました。でも別にこの人とはもう関わらないしと思って(笑)
私の住む自治体では新型コロナ以降は発達検査だけで就学先の判定が出て、行動観察とか一切ないんです。子どもを見ないまま検査結果で判定が出るので全然信用できなくて。検査的には支援学校判定だろうなという数値でしたが、佑美先生や通っている療育の先生たち信頼できる人はみんな支援級が良いと言ってくれていました。
でも自宅近くの小学校がマンモス校で、支援級も20~30人いるようなところだったんです。そのため、引っ越しをすることにしました。
小規模の支援級でゆったりと成長中 いろんな刺激を入れたい
━━━引っ越し! それは大きな決断ですね。
(Rさん)持ち家の人だと難しいかもしれませんが、我が家の場合は引っ越しをして本当に良かったです。学校をいっぱい見学に行って、小規模校にしました。支援級には8人くらいしかいないところです。
息子が一番手がかかる子だと思うんですけれど、人数が少ないので手厚く見てもらうことができています。発語が三語文くらいなので、気持ちを伝えるのが苦手で練習中。集団に入る時は個別に声をかけてもらうなどしてもらっています。学校生活にも慣れました。登校も嫌がる様子はなく、ゆったり過ごさせてもらっているからこそですね。
支援学校だともっと先生も多いですし、手厚くいろんな配慮があって良いと思うんです。でも昔、市の児童発達支援センターに2年間通った時に全然成長を感じなかったのですが、こども園に入ってから周りの子たちとの関わりでめちゃくちゃ伸びたんですね。中学校のあたりからは支援学校なのかもしれないと思っているので、低学年のうちだけでもいろんな刺激を入れたいと思いました。
━━━そんなふうに息子さんへの思いが変わっていったんですね。
(Rさん)それまでこの子は重い自閉症だから私の方が長生きしなきゃといった気持ちでいて、将来のことを考えては絶望していました。何でそう思ったのかと言えば、最初の療育先で参加したセミナーで、発達障害のある子が犯罪者になった話を聞いたことがあって。そんなふうにならないように生活環境が大事という話でしたが、子どもが3歳の時にそんな話をされたら暗くなりませんか? それでずっと気持ちが暗かったんだなと思っています。
今も将来のことを見るとどうなっていくんだろうなという不安はたくさんありますが、何か考えてもしょうがないなっていう感じにシフトしてきて、まずやれることをやっていこうと。楽しく過ごせたらいいのではと考えられるようになりました。
こうやって楽観的になれたのはここ1~2年ですね。子どもが小学校に上がってからは自由時間もとれるようになったので、いろいろと楽にもなりましたし。これからはもっとたくさんの場所に連れて行ってあげたいです。場所見知りのある子なので、経験を増やし、慣れた場所を増やしていきたいなと思っています。

2歳半のころ、療育先でお買い物ごっこ=Rさん提供
━━━息子さんの良いところを教えてください。
(Rさん)慣れればけっこうどこでも楽しく過ごせる子です。場所見知りはあるけれど人見知りはしないので、接する大人が変わっても大丈夫なのが楽なところでしょうか。外遊びや体を動かすことも好きで、楽しめることがたくさんあります。人見知りはないんですけど、自分から積極的に関わっていくことはあまりしないマイペースな子です。でも親族にはすごく甘えてきてかわいいんですよ。
文・井上仁周
| 子ども発達支援アカデミーVARYでは、障害の診断の有無は関係なく、発達特性が気になる子を育てる親御さんが子どもとのかかわり方を学べる場を提供しています。現在VARYメンバーは海外含め全国各地から参加され100名を超えており、佑美先生から学べるのはもちろん、同じように悩む先輩ママたちの話も聞けます。また、発達特性があるからこそ親子で強みを見つけるアートプロジェクトが立ち上がるなど活動の幅も広がっています。佑美先生に直接お子さんの発達のことを相談したい方、お子さんの発達特性を活かす子育てをする仲間を作りたい方はぜひ入会をご検討ください。きっと発達特性を活かした子育てができるようになり、お子さんのことを大好きになれますよ。 |