「発達特性があっても小学校受験に挑戦できるのかな?」と考える親御さんもいらっしゃるでしょう。発達特性があっても、その子に合った学校を選ぶことで、私立小学校に通えるケースもあります。
今回は、ASD傾向のありながらも小学校受験に成功し、私立小学校に通う娘さんを育てるEさんにインタビューしました。

3歳の頃植物園にて。大きな葉っぱに驚いている娘さん。=Eさん提供
毎日2時間の行き渋り。わがままなのか発達特性なのか悩む日々
━━━お子さんの発達特性はどれくらいの時期に気づきましたか?
(Eさん)小さい頃からなかなか寝なかったり、散歩しても歩いてくれなかったり、こだわりが強かったりなど、育てにくさを感じていました。
4歳ぐらいで市の発達支援センターに相談に行ったのですが「考えすぎですよ」みたいな回答でした。4回ぐらい相談に行きましたが、全部そんな回答で進展しなくて……。
5歳になった時に自分でクリニックに行ってWISCを受けたんですけど、数値的にはちょっと高めだけどASD傾向があるねといわれました。
━━━1歳半検診や3歳児健診の結果はいかがでしたか?
(Eさん)1歳半検診は質問されるとコアラのように私にしがみついて、質問には答えず……。言葉も出ていましたが、心理士さんと私でお話して、経過を見ましょうみたいな感じでした。
3歳児検診は病院で受けたんですけど、そもそも病院が大っ嫌いなので、体重測るのも、身長測るのも、取れたてのマグロみたいに暴れて大変でした。
自分の気持ちを表現するのは苦手なんですけど、物事を説明するときは、大人みたいにベラベラしゃべるので、発達の遅れがあるようには感じませんでした。
ただ、佑美先生に動画を見てもらったら目が全然合っていないと指摘されました。私も目を合わすのが得意ではないので、全然気づきませんでした。

自宅にてパン作り。「3歳頃から始めたお料理も楽しんでいます」とのこと。=Eさん提供
━━━娘さんを育てる中で、特に大変だったと感じるエピソードはありますか?
(Eさん)集団生活が苦手なので幼稚園に行きたがらなくて、毎日2時間ぐらい行き渋りがありました。制服を着せても脱いでしまったり、泣き叫んだりしながら、抱っこしてどうにか連れてくみたいな毎日でした。こちらがこん負けして休んでしまう日とかもありましたね。
先生は「幼稚園では楽しんでいます」とおっしゃるんですが、娘的にはやりたくないのに、やらされることが多くて嫌だったみたいです。集団生活は意外と頑張って適応しようとするので、先生たちもわがままなのか、特性なのかわからないという感じでした。
━━━お話ができて、ある程度指示が通ると、わがままなのか特性なのかわかりにくいですよね。他にはどんなことが大変だったと感じますか?
(Eさん)人が多いのが苦手とか、音が大きいのが苦手とかもありますが、材質にこだわりがあるのも大変でした。固い椅子じゃないと座れなかったので、バスや電車の椅子に座るのが難しく、木の板を毎日持って、それを席に敷いて座らせていました。
レストランとかも、座れない椅子だと癇癪を起こしてしまうので、木の板持っていってそこに座らせるみたいな感じが幼稚園時代は続きました。
スポット的なところで大変だったのが、発表会とか運動会。演技ができなくて、観覧席に来てしまうことが多かったです。小学2年生になってやっと自分の演技の時に参加できました。
あと、1歳過ぎたぐらいからお昼寝しないのに、夜寝てくれないのも大変でした。1人目の1人っ子だから、頑張ったら治るのかなって色々試したんですけど、効果がなくて。5歳で診断が出てからは薬を飲み始めて、9時ぐらいには寝るようになったのでかなり楽になりました。
「もう一度、我が子を好きになろう」というキャッチコピーに惹かれて
━━━佑美先生のことはどうやって知りましたか?
(Eさん)インスタグラムです。就学前セミナーを開催されていることを知り、それに申し込んだのがきっかけでした。実は、就学前検診の時に、大人数が苦手なのもあって、体育館抜け出して走って逃げちゃうみたいな感じになっちゃったんですよね。そこで私も心が折れてしまったんです。
佑美先生の、就学前セミナーを受講した時に、「もう一度、我が子を好きになろう」というキャッチフレーズを聞いて、発達特性への向き合い方をしっかり学びたいなと思ったのがきっかけで、VARYに入会しました。
━━━娘さんのことは大事にされてるとは思うんですが、育てるのが大変と感じることがあったのですね。
(Eさん)そうですね。もちろん、常に大事には思ってはいますが、やっぱしんどいなと感じることも多くて。就学前検診で、他の子は普通に受けてるのに、1人だけ大騒動みたいになってるのを見て、心が苦しくなりました。
━━━VARYに入って学んで印象的だったことを教えていただきたいです。
(Eさん)佑美先生にアイコンタクトを指摘されたのですが、確かに話してる時に全然目が合ってないことに気が付きました。佑美先生から、無理強いするんじゃなくて、自然と娘の目線に入ったり、私も目が合ってから対応したりすることを心がけていったら、2週間ぐらいで、話してる時も合うようになりました。そこから、娘との意思疎通が格段にしやすくなりました。
━━━ペアレントトレーニングは受講しましたか?
(Eさん)はい、昨年受講しました。子どもの行動を「増やしたい行動」「減らしたい行動」「やめさせたい行動」に分けて対処する方法を学んだのですが、これがすごくよかったです。以前はやめさせたい行動をしてる時に、娘の人格ごと嫌だなと思ってしまう自分がいたのですが、佑美先生からは行動には必ず理由があるということを学びました。行動だけに注目するようになってから、自分の心の中で嫌な気持ちが減りました。娘に対してイライラすることが減ったので、娘にとっても良かったと感じています。
あと、講座で学んだ「穏やかに、近づいて、落ち着いた声で注意すること」も心がけるようになりましたが、これも効果がありました。それまでは、強い口調でガーって言うと、娘もガーって言い返してきたのですが、不要なぶつかりがなくなりました。
宿題や出席のハードルは下げてOK。「得意なことを伸ばして行きたい!」
———幼稚園はどういう風に選びましたか?
(Eさん)幼稚園入る前までは、おとなしくて、ちょっと賢いのかなと思っていました。手先も器用で、細かいことするのが好きだったので、モンテッソーリの幼稚園を選びました。
結構かっちり系の幼稚園だったので、成長と共に娘のこだわりが出てきて、合わなくなったと感じます。今思えば、だから行き渋りも多かったのかなと。
でも、ほとんどが小学校受験をする熱心なご家庭が多かったところはよかったと思っています。
━━━娘さんは小学校受験に成功したとのことでしたが、どのように準備しましたか?
(Eさん) ペーパーテストが得意なタイプだったので、年少から塾にはいって受験の準備をしました。ただ、面接が苦手だったので、面接対策は大変でした。
あと、普段と違う場所で受験なので、環境の変化が苦手だったんだなと感じます。面接中に、私に抱きついてしまうこともあったのですが、6校受験して1校ご縁をいただけました。
━━━いま通われている小学校はどんな感じの校風なんですか?
(Eさん)本当に自由な校風で、1人1人の感性を大切にしてくれる学校です。少人数制なので人数が少なくて、これも娘には合ってると感じています。
不安だからついてきて欲しいと言われることもあるのですが、幼稚園の頃に比べるとスムーズに通学してくれます。
疲れやすいので、佑美先生からもアドバイスもらって、週1回くらいお休みする日もありますが、あとは元気に楽しんで通ってくれています。
バスと電車に乗って通っているのですが、偶然近所に同じ小学校に通うお友達が住んでたので、その子と一緒に行く日もあります。
宿題は全然やりたがらないんですけど、これも佑美先生からアドバイスもらって、宿題を少なくしてもらうように先生にお願いしたり、口頭で答えたのを私が書いてあげたりハードル下げています。
娘が通っている小学校は発達特性がある子も多くて、割と融通きかせてくれています。
びっくりしたのは、娘は見学に行ったときからずっと今通っている小学校に通いたいと言っていたんですよね。私はかっちり系がいいと思っていたので、娘は自分に合う小学校をわかってたんだなと関心しました。
━━━ちなみに、発達特性があることを小学校にはお伝えしたんですか?
(Eさん)受験の時や入学前はお伝えしてなくて、5月の面談の時にお伝えしました。その時に先生が「なんでも頑張ってやれるタイプだと思ってた。言いすぎちゃったかも」みたいにおっしゃっていて、それから関わり方を変えてくださったみたいです。

娘さんが7歳の時に図鑑を見ながら書いた絵。「いまは夏休みの自由課題で魚の図鑑づくりに夢中です」とのこと。=Eさん提供
━━━ VARYに入って色々学んだり、Eさん自身が接し方を変えたりして、娘さんも大成長していると思いますが、これからどんな風に成長してほしいなと思いますか?
(Eさん)そうですね。自分をあんまり押し殺さず、自分らしく楽しんで過ごしていってほしいなって思います。私も枠に押し込めちゃいそうになるんですけど、それをなるべくなくしていきたいなと思っています。
あと、お絵描きがすごく得意なので、その辺を伸ばしてあげたいなと思います。今は夏休みの自由研究に燃えていて、魚の図鑑を一生懸命作っています。好きな事・興味があることを徹底的に調べるのが得意なので、そんなところを伸ばしていきたいです。
━━━最後に発達特性のある子が小学校受験をする際のアドバイスをいただきたいです。
(Eさん)自分が失敗したなって思うのは、家庭教師の先生にペーパーを1日30枚やらせるように言われて、それを無理やりさせてしまったことです。できる子もいると思いますが、うちの子は人にやらされるのがすごく苦手なので、ものすごく怒ってしまったことで親子関係を悪くしたなと反省しています。
毎日2〜3時間かけて取り組んでいましたが、なにも30枚もやらなくて良かったんじゃないかなって。子どももですが私も辛かったです。なので、その子のことをしっかり理解し、その子に合った方法でサポートをするのがいいのかなと思います。
あと、佑美先生から学んだ関わり方をしたり、子どもに合った環境を用意したりすることで子どもが良い方向に変わっていくことを実感しました。
発達特性がある子の受験サポートは大変かと思いますが、都度お子さんに合った対応や環境に変えていってもらえたらと思います。
(文:勝目麻希)
子ども発達支援アカデミーVARYでは、障害の診断の有無は関係なく、発達特性が気になる子を育てる親御さんが子どもとのかかわり方を学べる場を提供しています。現在VARYメンバーは海外含め全国各地から参加され100名を超えており、佑美先生から学べるのはもちろん、同じように悩む先輩ママたちの話も聞けます。また、発達特性があるからこそ親子で強みを見つけるアートプロジェクトが立ち上がるなど活動の幅も広がっています。佑美先生に直接お子さんの発達のことを相談したい方、お子さんの発達特性を活かす子育てをする仲間を作りたい方はぜひ入会をご検討ください。きっと発達特性を活かした子育てができるようになり、お子さんのことを大好きになれますよ。 |