「発達特性がある子の進学先に悩む……」そう感じている親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか?実際にVARYメンバーで年長の子を育てる筆者もそう悩む一人です。
今回のインタビュー企画では、発達特性がある2人のお子さんを通常学級に進学させる決断をしたTさんにお話を伺いました。「親の行動を変えれば、必ず子どもも変わります」というTさんの言葉は、非常に説得力があります。Tさんのお話から、未就学の期間にどれだけ環境を整えることができるかで子どもの将来が変わると感じたので、ぜひ参考にしてみてください。

2023年、頑張っている子ども達と自分へのご褒美でハワイ旅行へ「旅行は子どもの成長を感じられるので大好きです!」とTさん。=Tさん提供
母に指摘されるまで発達特性に気付かなかった……
━━━現在、小学2年生の息子さんと小学1年生の娘さんを育てているとのことですが、息子さんの発達特性に気付いた時はどれくらいでしたか?
(Tさん) 長男に関しては、私の母が気付きました。長男が1歳10か月ぐらいの時に、言葉の遅れを感じていたみたいです。ただ、夫も優しいのですが個性が強いタイプで、私も自我が強い方なので、グレーゾーンなんじゃないかと思っていました。はじめての子だったので、特に気にかけてはいなかったんです。
━━━ちなみに一歳半検診はどうでしたか?
(Tさん)特に問題ないと言われました。その場が嫌で暴れることもなかったので、一連の検診をして終わりました。当時は、私も発達特性があるとは思っていませんでしたし、母がすごく息子を気にかけてお世話してくれてたこともあり、家の中で問題行動が起きてはなかったんです。今思うと、言葉が遅い以外にも、ミニカーを1列に車をひたすら並べる、ピョンピョン跳ねる、泣き虫などそういう特徴はありましたが、困ってるかと言われたら、別に困ってはいなかったんですよね。
━━━一歳半検診は、親が気になることを伝えない限りスルーされるケースも多いですよね。その後、何がきっかけでTさんはお子さんの発達特性に気付き、受け入れていったのですか?
(Tさん)私の母が発達の心配をしていたこともあり、二歳検診に行ってみることにしました。二歳検診でも様子を見ましょうとなりましたが、その時に住んでいる自治体の発達相談を紹介されました。今思うと敷居が高くないようにそういう場を設けてるんだと思うのですが、 子どもをただ遊ばせて、お母さんの話をひたすら聞くみたいなところでした。 私としては、何か気になることがあるなら、はっきり教えて欲しいと思ったのですが、特にそういう素振りもありませんでした。
その時間がもったいない気がして、涙を流しながら「発達特性を受け入れられてはいないけど、自分の気持ちが整わない時間をただただ過ごさせるのはもったいない気がする」と相談員の方へ伝えました。「私の気持ちがどうとかではなく、この子の時間をこの子のために使いたい」と。
そうしたら、「病院の初診は早くて1年かかるから、予約しておいてもいいかもね」と教えてくれました。
療育の効果に発達特性を受け入れて前に進む準備ができた

「アート教室の真似をして家でも制作を好きに作れるスペースを作りました」作品を飾ることで子どもたちの自己肯定感も上がった気がすると教えてくれました。=Tさん提供
━━━やはりどこも初診まで時間がかかりますよね。待っている期間はどう過ごしましたか?
(Tさん)相談員の方に療育手帳がなくても受給者証を発行でき、療育には通えると教えてもらい、療育を探しはじめました。そしてたまたまたどり着いたのが病院母体の療育施設だったので、まず病院を受診しないとその療育施設は利用できないと言われて。こちらも人気の病院なので予約は先と言われていましたが、たまたま電話をかけた翌日に空いてる時間があると言われてすぐに診察してもらうことになりました。
ただ、そこでも診断というよりは先生の話を聞くだけで……。食い下がったら、やっと検査になりました。その結果「発達特性の傾向があります」と言われたのですが、オブラートに包みこまれすぎて、診断が降りてることに1年気づかなかったぐらいでした(笑)そして、療育施設にもたまたま空きがあったので、すぐに通いはじめることができました。
療育に通い始めて半年ぐらいで、ものすごく息子の成長を感じました。療育の効果を認めざるを得ない状態となり、息子が3歳の時にOT(作業療法)とST(言語聴覚療法)も受けさせて欲しいとお願いしました。OTとSTは医療の分野なので、診断が下りたことを受け入れなければいけないのですが、その時には「どっちでも構いません」と思うようになっていました。
━━━娘さんの発達で気になったことはありましたか?
(Tさん)娘はコミュニケーション能力が高く言葉の遅れはありませんでした。ただ、かんしゃくがとてつもなくて。娘が2歳ぐらいの時は、泣きながら裸になったり、 車の中でも感情表現でお漏らししたり、兄に対して手が出たりしました。
息子が発達特性のこともあったので、娘も最短で発達検査をしてもらい、まずは2歳10ヶ月から個別療育に通い始めることにしました。その後、息子と同様にOTを受けさせたいと思い3歳10ヶ月ごろから通うようになりました。
あと、これは息子もなんですが睡眠障害もありました。寝かしつけに2時間くらいかかったり、夜中に起きてしまうのも大変でしたね。
━━━言葉の遅れなど決定的な特性がないと発達特性を認めるのは難しいと思いますが、娘さんのことを考えて早めに行動に移したTさんは素晴らしいと思います!
(Tさん)長男が療育やOT・STに通い始めてすごく成長したので、娘にも少しでも早く対処したいと思いました。ちなみに、この頃すでにVARYに入会していたのですが、佑美先生に相談したら「我が子のことで遠慮する必要はないですよ」と言っていただき、なかなか予約が取れないのですが、ねじ込んでもらうようにして予約を取りました。
子どもの成長をさらに見たい!そう感じた時に出会ったVARY

2024年、家族でディズニーランドへ。=Tさん提供
━━━佑美先生のことはどんなきっかけで知りましたか?
(Tさん) 半年ぐらい療育を受けて目まぐるしく息子が成長したので、療育だけに任せるのではなく、家の中でも何かできればと考えるようになりました。 夫に「我が子のことで1番頑張れるのは私たちだよ。お金がかかったとしても何か子どもにとって良いものがあれば学びに行きたい」と伝えました。そして、発達特性に関する情報をインターネットで検索していた時にたまたま佑美先生のインスタにたどり着きました。その当時、佑美先生もVARYを始めたばっかりということも知らず、実際にどんなことをしているかわからなかったのですが、コンテンツを見たいという思いが勝り、入会を決めました。
━━━VARYに入会してからどんな変化がありましたか?
(Tさん)VARYに入って良かったのは、佑美先生がそれぞれのお子さんに対しての対処法を教えてくれることです。私たち親は子どもが起こす一つ一つの問題行動に悩んでいるわけで、その対処方法を知りたいんですよね。どんな小さなことでも、佑美先生に聞けば的確な答えが返ってくるのはものすごくありがたかったです。
病院の先生と療育の方たちにも感謝していますが「お菓子買う時にただこねるんです」「お兄ちゃんを叩くのをやめさせたいけれど通じないんです」みたいな相談はしにくくて。このような質問にすべて丁寧に答えてくださるのは、すごくためになりました。
それと、佑美先生に教えていただいたポジティブな言い替えですごく子ども達は変わりました。「座って」という命令形や「走らない」という否定形ではなく「お尻をつけます」「歩きます」と具体的な指示など。ポジティブな言い替えを全部真似して、それが家の中でできるようになったら子どもたちのかんしゃくが減っていって、問題行動も減っていきました。
幼稚園を転園させる決断
━━━お話を聞いていると、Tさんがお子さんたちの発達特性を認め、ご自身の行動を変えたことで、とても順調にお子さんたちが成長していったように感じます。
(Tさん)実は、息子が年中の時に大事件が起きたんです。幼稚園の先生に「あなたって何もできない人間ね」って耳元でささやかれて。その事件が起きた時に、「この子を守れるのは親だけなんだ」と思いました。保育のプロがそんなことを言うなんて信じられませんでしたが、先生と園長先生も認めていたので。12月~3月までは幼稚園を休ませて、自宅で自分が幼稚園の役割をすることを決めました。その期間は、公園に出かけたり、色水遊びをさせたり色々工夫して過ごしました。
転園先として、佑美先生がおすすめとおっしゃってたモンテッソーリの園を探しました。私が事業をしていることもあり、企業主導型の保育園には入れたのですが、それが大成功。2ヶ月ぐらいで子供の不安定さが取れました。先生たちに対して恐怖心を持ってたんですけど、2ヶ月できるだけ同じ先生がたっぷり愛情を注いでくれ、みるみる子どもたちが回復していくのがわかりました。
━━━勇気を出して転園させて本当に良かったですね。
(Tさん)でも、自分一人だったらそんな決断できなかったと思います。佑美先生の後押しもあり、転園の判断ができました。普通の病院の先生は、責任も取れないし、そんなこと言ってくれないじゃないですか。佑美先生のアドバイスを受けて「子供の成長を諦めなくていい」と心から思えました。転園をきっかけにそれまでよりいい環境を求めてモンテッソーリの園を探した訳ですが「子どもを天才にしたいわけじゃなくても、親のできる範囲で子どもの環境を整えてあげるのは別に悪いことじゃない」と佑美先生が言ってくれたのが、後押しとなりました。
━━━転園してからお子さんは落ち着いて過ごせるようになりましたか?
(Tさん)はい、転園してから本当に落ち着きました。そして長男が年長の時期だったので、就学前にIQを伸ばしたいと考えられるぐらい余裕ができました。
ちょうどその頃、幼稚園時代のママ友に会って、小学校受験の問題がIQの問題に似ているので興味があると話しました。そうしたら、その子が通っているお受験塾をご紹介してくださったんです。実はそのお受験塾には「満席です」とお断りされた後だったので、紹介していただけたのは本当にラッキーでした。
療育、モンテッソーリの保育園、お受験用の塾、家庭環境、すべての環境が整って、息子は飛躍的に成長しました。3歳の時のIQが65だったのですが、年長の時点ではIQ90まで伸びました。私立小学校にご縁はありませんでしたが、年長の1年で就学準備がしっかりできたのは良かったです。足りないところもありますが、結果的にいまは公立小学校の通常学級でやっていけています。
小学校では子どもの発達特性に合わせた対応を

2025年、娘さんの入学祝いで沖縄旅行へ。息子さんも好きな外車をレンタカーで選べて大満足だったそう。=Tさん提供
━━━素晴らしい成長ですね。実際に小学校に入ってからの息子さんの様子はいかがですか?
(Tさん)最初は緊張していましたが、おかげさまで息子自体は集団行動も指示もはいり学校生活は普通にこなせています。ただ、小学校のクラスが荒れていて……。入学して2日目に馬乗りの喧嘩とか。1年生の間は補助の先生が3〜4人入っても授業にならない日がありました。息子には実害がなかったのですが、視覚優位なので目の前で起こったことを処理しきれなくて、夜うなされたりしててかわいそうでした。息子には「あの子がしてることは、あなたには関係ないので気にしないでいいんだよ」と半年くらい丁寧に説明しました。イヤーマフも持たせていた時期もありましたよ。
ただ、2年生になってからは担任の先生が変わって状況が少し落ち着いたこともありますが、「自分で持ってかない」と言いだして。よほどひどい時じゃないと持ってかないですね。
━━━その判断も自分でできるってすごいですよね。
(Tさん)そうですね。小学校の世界は、勉強だけが心配事ではないなと思いました。なので、お受験塾の延長でそのまま塾にも通わせています。モンテッソーリやお受験用の塾では言葉遣いもすごく良かったのに、小学校が荒れていることで口が悪くなってしまうことを防ぐためにも日々話し方を気をつけていますしすぐに修正するように努めています。実際に、私だけではなく、塾の先生なども「乱暴な言葉はいやよね。国語の教科書に出てこない言葉は使いません」とはなしてくださるので、乱暴な言葉はかっこよくないと息子も受け入れやすいみたいです。
━━━他に息子さんが小学校に入ってから成長したなと感じるエピソードはありますか?
(Tさん)他の子にとって10枚のプリントを1週間で宿題としてやりきるのが簡単なことであったとしても、うちの子にとっては結構大変なんです。それでも結局、泣きながらでもやり、やりきれるようになったのは偉いなと。受験はご縁はなかったんですけど、「諦めない人が勝つんだよ」って言い続けていて、それを本人なりに理解して行動できるようになりました。一年生の冬に漢字検定に親子でトライしましたが、試験中や時間まで待っている時間の彼の態度など初めてみましたがしっかりしたものでした。
また、1年生から2年生の変化で言うと、学校に行く準備を自分でできるようになりました。朝のお支度のTODOボードを作り、1年生の時から一緒に準備していたのですが、娘も小学校に入って自分で準備するようになったこともあり、息子も自分でできるようになりました。
━━━娘さんはまだ1年生になったばかりなのに、自分で進んで準備ができるんですね!すごいです!
(Tさん)そうですよね!素敵なことです。ただ、娘はいま感覚過敏が激しく出ていて……。やっぱり急に環境が変わった中で頑張ってるので、ズボンがムズムズしてしまうみたいです。佑美先生に相談したところ「過敏さは仕方がないと思います。履けるズボンに買い替えてください」と気持ちが良いくらいはっきり言ってもらえたので、唯一履けるズボンを5つ買いました。そうしたら私の気持ちも、すごく楽になりました。それでもダメな日は、もうスカート履かせています。本当は体育のある日はズボンが望ましいと言われていますが、先生にも事前に伝えて、スカートで通学できるようにしています。息子は困り事が見てわかるタイプなんですが、娘はわかりづらいタイプなので、過敏さや場面によって固まってしまうことなどを前もってお知らせしておきました。
あとこれもラッキーだったのですが、OTの先生がお願いせずにサポートブックを作ってくれたんです。この内容がとてもわかりやすかったので、そのままコピーして学校に共有しました。学校の先生もそれを見てくださっているので、娘への理解度が高く、助かっています。
なので、ぜひお子さんの特性を理解し、特性や診断名を書かなくても、わかりやすい形で前向きな言葉で学校に共有するようにするのも一つの手段だと思います
━━━最後に、お子さんの発達特性に悩んでいる親御さんたちになにか言葉を送るとしたらどんな言葉を送りたいですか?
(Tさん)今悩んでること、1つできるようになったら、また新しい悩みが増える日々を繰り返してると思います。先を想像しきれずネガティブな気持ちになることもあるかもしれません。思い通りに行かなくてイライラすることもたくさんあると思います。でも、自分が子どもの特性を理解して、子供のことを信じて肯定的に注目できるようになると子どもは変わって行きます。佑美先生がよく言う「靴が履けたね」「ありがとうって言えたね」などの肯定的な言葉が自然にでてくるように、まずは親が変わることが大事だと思います。自分が変わることを楽しみながら、お子さんと生活してください。
(文:勝目麻希)
子ども発達支援アカデミーVARYでは、障害の診断の有無は関係なく、発達特性が気になる子を育てる親御さんが子どもとのかかわり方を学べる場を提供しています。現在VARYメンバーは海外含め全国各地から参加され100名を超えており、佑美先生から学べるのはもちろん、同じように悩む先輩ママたちの話も聞けます。また、発達特性があるからこそ親子で強みを見つけるアートプロジェクトが立ち上がるなど活動の幅も広がっています。佑美先生に直接お子さんの発達のことを相談したい方、お子さんの発達特性を活かす子育てをする仲間を作りたい方はぜひ入会をご検討ください。きっと発達特性を活かした子育てができるようになり、お子さんのことを大好きになれますよ。 |