発達特性の専門的支援

インタビュー

「みんなと違う」は恥ずかしいことじゃない。孤独な育児を変えた“視点の転換”と“仲間の存在” interview#009

発達の特性が気になる子を育てていると、親は「周囲との違い」に悩み、孤独を感じることがあります。

今回は、生後7ヶ月頃から息子さんの発達に違和感を持ったSさんにインタビューしました。

VARYでお子さんへの対応を学びマインドが変わったことで、不安や葛藤を「面白がる力」に変えていけたそうです。

1歳半頃、沖縄の美ら海水族館へ。「魚を見て、泳ぎましょ〜」と歌ってました。=Sさん提供

生後7ヶ月で感じた「違和感」

――お子さんの特性に気づいたきっかけは何でしたか?

(Sさん)生後7ヶ月の頃です。近所の「赤ちゃん英会話」に参加した際、先生の指示に対して他の子とは違う動きをしたり、興味のあることへの没頭の仕方が違ったりして、「なんか違うな」と感じました。 1歳を過ぎても「バイバイ」などの発語がなく、外に出てベビーカーに乗ると目が合わなくなることも気になり始めました。地域の保健師さんや小児科に相談しても「まだそんな時期じゃない」「様子を見ましょう」と言われるばかりで、逆に不安が募り、ネット検索をしては落ち込む日々でした。

――生後7か月!そんなに早く気付いたんですね。

(Sさん)はい。様子を見るだけでは心配だったので、1歳4ヶ月で小児脳神経科を受診しました。その先生からは「この子は診断はつかないし、一生薬も飲まないと思うけれど、早めに集団に入れた方がいい」とアドバイスを受けました。ちょうど私もずっと息子と2人で過ごすのが大変に感じていたこともあり、1歳5ヶ月で保育園に入園させました。 すると、驚くことに2週間で言葉が出始め、1歳半検診の時には2語文を話すほどになったのです。そのため、1歳半検診ではまったく問題視されませんでした。ただ、安心したのも束の間、そこから長い「行き渋り」との戦いが始まりました。

━━ちなみに、佑美先生のことはいつ知ったのですか?

(Sさん)まだ小さいので様子見と言われたのですが、「この時期にできることはないのかな」と日々考えていました。そんな時、たまたまYouTubeで佑美先生が育児相談のようなライブ配信をされていたのを見つけました。リアルタイムで配信中に「何か気になることあったら質問ください」と先生がおっしゃっていたので、相談させていただきました。 

その頃、子育て広場に行くと息子がストローマグから水をプーっと吹くというのをずっとやっていてそれに悩んでいました。遊び場でお友達の近くで遊んだりはするんですけど、ひたすら水を吹いていて、なんでそんなことをするのかが分からなくて…。 そうしたら、佑美先生が「もしかしたら気を引きたい、注意引きなのかもね」と教えてくださって、そういう視点が全くなくてびっくりしたんです。私は「水吐いちゃダメ」と怒って連れて帰ったりしていたんですが、問題行動をするのは違う理由があるのかなと気になって。もっと佑美先生に相談したいと思い、「個別相談」をお願いしたのが、佑美先生の元で学ぶようになったきっかけです。

「行き渋り」と、不安への対応

2歳を過ぎた頃、家族旅行で熊本の阿蘇へ。自然の中を走り回り、虫を探していたそうです。=Sさん提供

――「行き渋り」はどのような状況でしたか?

(Sさん)息子はイベントが苦手で…。例えば、お正月に獅子舞が来るみたいなちょっと怖いイベントの後は当分行きたがらないし、太鼓の音がしただけでも、ものすごく怖がるようになってしまいました。

年少から幼稚園に入園して2〜3ヶ月はバスで楽しそうに行っていたので安心していたんですけど、通っている幼稚園はモンテッソーリ教育を取り入れていて、「縦割りクラス」があるんです。 入園して3ヶ月後ぐらいから縦割りと横割りの移動が始まったんですけど、その変化にびっくりしたのか、編成が変わってからは毎朝泣くようになって…。

保育園の頃は泣いてもバイバイしたらすぐ泣き止んでいたのが、バス停に連れて行くまでにパニックみたいな泣き方をするようになってしまい大変でした。バス停に行くまでの道が中学校の通学路でもあるのですが「ギャー」と大絶叫するんです。中学生や先生たちに大注目されながらバス停まで連れて行くのは結構辛かったです。

――どのように乗り越えてこられたのでしょうか?

(Sさん)佑美先生に相談し、具体的な対策を実践しました。 まずは気分の切り替えとして「キシリトールのキャンディーをバス停まで舐めていく」ことや、朝の買い物に付き合ってもらうことなどを試しました。

 また、息子が未来を先読みしすぎて不安がっていることがわかったため、「怖い」という漠然とした感情を言語化するサポートをしました。例えば「今日は制作がうまくできるか心配」といった具体的な不安を聞き出し、帰宅後に「意外とできたね」とフィードバックすることで、少しずつ自信に繋げていきました。

「憐れみの目」で見られる辛さから、「うちの子って面白い」と思えるほどに変化

2歳半頃、福井の恐竜博物館へ家族で行きました。「恐竜の名前を順番に叫んでいました!」=Sさん提供

――育児の中で特に辛かった出来事はありますか?

(Sさん)うちの幼稚園は落ち着いた雰囲気で、集団で目立つ子が少ないんです。お遊戯会でたくさんの観客がいる中で、うちの子だけが舞台で「ママ!のどが乾いたー!」と泣き叫んでしまったんです。会場は「可愛いね」って笑いに包まれたんですけど、私としてはものすごく恥ずかしくて。「可哀想だね」という目で見られるような気もして、「なんでうちの子はみんなと違うのかな」と自信をなくしてしまいました。

――その気持ちをどうやって切り替えたのですか?

(Sさん)佑美先生からいただいた「心の中でこっそりマウントを取っていいんだよ」という言葉に救われました。「発達に悩む子のお母さんは、他の人が気づかない小さな成長を大きく喜べる」「世間の”いい子”とは違うけど、感性も豊かだし普通じゃなくて面白い」と言ってもらえて、心が軽くなりました。

それまでは”恥ずかしい”とか”目立ちたくない”という気持ちから「みんなと同じようにしてよ!!」と息子を叱ってしまうこともありました。「ママごめんね、みんなと同じようにするよ」と言われて、息子を傷つけたことに自己嫌悪に陥ることも…。今では子供の癖の強い行動を夫婦で「面白い子だな」と笑って受け止められるようになりました。

孤独を癒やす「サードプレイス」としてのコミュニティ

5歳の春、家族で万博へ行きました。大屋根リングの上で虫を探していました。=Sさん提供

――現在は子ども発達アカデミーVARYに参加されていますが、どのような変化がありましたか?

(Sさん)幼稚園のママ友には、表面上は仲良くしていても「うちの子だけ違う」という思いから本音の悩みは言えませんし、夫への愚痴も言えません(笑)。でも、VARYには同じ悩みを持つ仲間がたくさんいて、「一人じゃない」と実感できます。 子どものことだけではなく、VARYのコンテンツで夫の「癖強エピソード」を話すものもあるんですが、その話を聞いて笑ったり共感したりすることも、心の休憩室のようになっています。現実の日常では見つけられない、自分にとっての大切な居場所(サードプレイス)になっています。

――最後に、同じ悩みを持つ方へメッセージをお願いします。

(Sさん)悩んで子どもに強く当たってしまい自分を責めていた日々から抜け出せたのは、佑美先生や仲間の存在があったからです。「一人じゃないし、同じ思いの仲間もいるから大丈夫」と思える場所を見つけることで、子育てはもっと楽しくなると思います。

(文:勝目麻希)

子ども発達支援アカデミーVARYでは、障害の診断の有無は関係なく、発達特性が気になる子を育てる親御さんが子どもとのかかわり方を学べる場を提供しています。現在VARYメンバーは海外含め全国各地から参加され100名を超えており、佑美先生から学べるのはもちろん、同じように悩む先輩ママたちの話も聞けます。また、発達特性があるからこそ親子で強みを見つけるアートプロジェクトが立ち上がるなど活動の幅も広がっています。佑美先生に直接お子さんの発達のことを相談したい方、お子さんの発達特性を活かす子育てをする仲間を作りたい方はぜひ入会をご検討ください。きっと発達特性を活かした子育てができるようになり、お子さんのことを大好きになれますよ。

関連記事

  1. 「みんなと違う」は恥ずかしいことじゃない。孤独な育児を変えた“視点の転換”と“仲間の存在” interview#009

  2. 預かり保育が使えず大ピンチ!「キャリアを諦めないために必死に子どもと向き合った1年でした」 Interview#008

  3. 「悩んでいる時間がもったいない!」アイコンタクトで心が通い合うようになった経験談 Interview#007

PAGE TOP