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預かり保育が使えず大ピンチ!「キャリアを諦めないために必死に子どもと向き合った1年でした」 Interview#008

発達特性がある子を育てていると、長時間保育や預かり保育を断られたり、療育や通院に時間を取られたりして、働き続けるのは難しいと諦めてしまう方もいらっしゃるでしょう。

しかし、協力者を増やしたり、制度を活用したりすることでキャリアを諦めなくても良いケースもあります。

今回の記事では、フルタイムで働きながら、VARYでお子さんへの声掛け・接し方を学び、お子さんの加配が外れるまで成長させたNさんにお話を伺いました。

4歳、幼稚園の教室から脱走している様子。=Nさん提供

加配がついてフルタイム勤務なのに預かり保育が使えないことに……


━━息子さんの発達が気になったきっかけを教えてください。

(Nさん)小さい頃から突発的に飛び出してしまったり、公園で遊んでても車道に出てしまったりすることがありました。言葉を覚えるのも少しゆっくりでしたね。

年少で幼稚園(こども園)に転園するまでは、保育園に通っていたのですが、集団行動が苦手で……。お散歩に行くと言ってもゴロゴロ寝転んでみんなと一緒に行動できない、登園後の準備をする時も1人やろうとしないなど、保育園の先生から指摘されたのが1番のきっかけでした。

医師に相談すると、発達特性はあるけれど性格の問題かもしれないから診断がつくほどではないと言われましたが、何とか改善したいと思い、市の発達相談に行って、それから療育を使えるようにしました。


━━発達特性がある息子さんを育てていて、大変だったことはありますか?

 (Nさん) 年少になるタイミングで転園したのですが、転園先の幼稚園でも外遊びから戻ってこない、すぐ教室の外に出てしまうなど、集団行動ができないていないと指摘されました。そして、安全の確保のために加配をつけますと。加配をつけるのは先生の負担が減るので良いと思ったのですが、幼稚園のルールとして、加配を使うと預かり保育はできないと言われました。

私はフルタイムで働いているので、行政に相談しに行ったり、預かってもらえる施設を探したりしましたが、小学校以降じゃないと長時間預かってもらえる所が全然見つからず、この時が一番のピンチでした。

預かり保育を利用できなくなることに絶望し、今すぐにでも改善できることを教えて欲しいと、もともと知り合いだった佑美先生に泣きつきました。

━━フルタイムで働いているのに預かり保育が使えなくなるのは危機的ですね。実際に、どうされたんですか?

(Nさん)佑美先生のアドバイスもあって、英語のアフタースクールを利用することにしました。 少しだけ猶予期間があったので、幼稚園の先生と一緒に声掛けの仕方とか、距離感をどうするかとか、とにかく家でもたくさん褒めるとか色々改善した状態で、アフタースクールに預けるようにしました。


幼稚園の先生には、佑美先生からのコンサルの結果を全部書き出してお伝えしました。また、幼稚園での生活のムービーを撮ってもらい、それを佑美先生に見せて、幼稚園の先生の息子に対する対応の改善ポイントを教えてもらいました。「甘えたらすぐ抱っこするのはダメ」など具体的な指摘を、信頼関係を崩さないようにケアしながら幼稚園に伝えて、幼稚園の先生とも面談を何回もしながら、改善していきました。

幼稚園の入園式。「5分くらいしか座れず式の間走り回る次男をずっと追いかけることになりました」=Nさん提供

━━幼稚園の先生にも対応の改善をお伝えしたのですね。すごい行動力です。

(Nさん)フルタイムでがっつり働いてるのに、強制的に預かり保育が使えなくなるのは不甲斐ないので、その代わり協力して欲しいと交渉しました。幼稚園の先生も発達特性がある子について勉強できる機会なので、一緒に勉強してしたいと前向きに対応してくれて良かったです。

園との関係が悪くなったら、退園させられるかもしれないと思ったので、関係をちゃんとキープしつつそれを伝えるのは、すごく気を使いました。

また、上司にも状況を伝えて理解してもらいました。フルタイムとはいえ自宅で仕事ができたり、フレキシブルに働けたりするのは良かったと思います。
 

━━ちなみに、療育はどんなところに通っていますか?

(Nさん)フラッシュカードなどの教材を使いながら発達を促してくれるところに通っていて、発語が増えたと感じています。療育の先生が幼稚園に息子の状態を見に来て、療育の先生と幼稚園の先生でどういう風に対応したら良いかを話し合ってくれて、それを療育のプログラムにも反映してもらったりと、療育と幼稚園の連携もしていただきました。とても親身に改善に取り組んでいただき、私も精神的に支えられました。

療育には水曜と土曜日に通っているのですが、水曜日はファミサポさんと私で交互に連れて行く感じです。極力仕事に支障が出ないようにしながら、息子の状態を把握できるように心がけています。

声掛けを変えたら1ヶ月でオムツが取れた!

━━佑美先生から学んで印象的だったこと、育児に活かせたエピソードを具体的に教えてほしいです。

(Nさん) まずは肯定的に注目することですね。振り返ると、褒める機会が少なかったと思っています。職場復帰した時、仕事に集中しすぎて、子どもにちゃんと関わらなきゃという気持ちがある一方で、家でもぼーっと仕事のことを考える時間が多かったと思います。


子どもに向き合って褒めるようになっただけで、オムツが1ヶ月で外れたのには驚きました。佑美先生からも、「この子はASDの傾向があるけれども、声がけで本当に変わるから。1ヶ月で変わるよ」と言われました。その言葉を信じて1ヶ月一生懸命声がけをしたんですが、本当にこんなに変わるんだと驚きました。

佑美先生は、1日30回は褒めようねと教えてくれたので、トイトレに限らずいろんなことを褒めました。椅子に座れているねとか、靴自分で履けたねとか。

それまでは、トイレもめんどくさいからしない感じだったんですけが、「褒められるなら頑張ろう」と息子の姿勢が変わったと感じます。

━━褒めるだけでそんなにも変わったのですね!息子さんはその後どんな風に成長していますか?
 

(Nさん)前はボールで遊ぼうとか、塗り絵で遊ぼうとか色々誘っても、本当にやる気を示さなかったのですが、声掛けを改善することでいろんなことに前向きに取り組めるようになり、いまはやりたいことに溢れてるんです。


公文式をやってみたいと自分から言ったり、英語を勉強してブラジルに行ってヘラクレスオオカブトを見たいと言ったり。そうなると、「週末は子供と何をしようかな?」「どこに連れて行ってあげようか」と親としても前向きな気持ちになりますね。

ちなみに、佑美先生から学んだ声掛けを頑張った結果、加配が取れて無事預かり保育も使えるようになりました。たった1年間で本当に大きく成長したと感じています。

━━フルタイムの仕事も頑張りながら、お子さんのサポートも全力なNさんを尊敬します。

 (Nさん)預かり保育が使えないとなった時点で、仕事を辞めたほうがいいのか、子どもに寄り添う時間を増やしたほうがいいのかと悩みました。


でも、佑美先生とお話をした時に、「子供と向き合う時間の量じゃなくて、質が大事だよ」と言ってもらい、それなら自分にもできるのかなと勇気が出ました。とにかく佑美先生から言われた通り声掛けしたことで、実際に1ヶ月で大きな変化があったので、質を意識する大切さを実感しました。

また、子どもへの向き合い方を学んだことで、仕事にも良い影響がありました。私は仕事でも、褒めることができない人だったのですが、この1年で職場の人のことも褒めるように意識したら、自然と職場の人にも声掛けられるようになったり、良いサイクルが回るようになりました。ちょっとしたことでも、声掛けられたら嬉しいのは大人も同じですよね。例えば「あの時にプレゼンしてたね。頑張ってるね」と伝えるだけで相手も嬉しくなり、良い関係を築くことができると実感しました。

佑美先生からは、子どもの接し方だけではなく、仕事や友人関係にも効果があるコミュニケーション方法を学べたと思っています。

「虫が好きになり虫取りに熱中しました。将来は虫博士になりたいそうです。」=Nさん提供

タスクをこなすだけではなく、子どもに気持ちを向ける大切さ

━━いま、キャリアと育児の両立について悩んでいる方に送りたいメッセージはありますか?

(Nさん)私がここまで頑張れた理由は、悩みを相談できる人が近くにいたことが一つです。職場の先輩にお子さんの発達特性で悩んでるママさんがいることは知っていましたが、自分が悩みを抱えた時にはじめて「ちょっと話聞いてください」と相談できたんです。その先輩から、お子さんが保育園の時は悩んでたけれど、その後は小学校で上手くやっているという話を聞けて、早期にきちんと向き合っていれば発達特性に悩むことは減ると感じました。なにより、他にも悩んでいる方がいるんだなと思えたり、情報交換できたり、やっぱり近くに同志がいるのは非常に心強かったですね。

VARYも、他にも悩んでる人がいるから自分も頑張ろうと前向きにと思える場所ですし、相談できる場を増やせるのは非常に大事だと思います。1人で抱え込むのが一番良くないので。
 

もう一つは、子どもとの時間は気持ちも子どもに向けたほうが良いということ。家事も育児も仕事も”タスク”を全部こなすだけではダメだと思っていて……。仕事の時は仕事にがっつり集中して、家で子どもと過ごす時間は子どもに気持ちを向けることを意識することが大切だと思います。


いろんなお子さんいるので、中には保育園に丸投げしても上手に成長するケースもあると思います。我が家も上の子は素直に成長してきたので、オムツが外れるとか、いろんなことが保育園でできるようになりました。周りを見ながら自分で考えて行動できる子もたくさんいると思うんですけど、でもやっぱり親が子どもと向き合う時間を作るのは大事だなと。

私の場合は専門職なので、仕事で色んな事が勃発すると、家の中でもぼーっとしちゃったり、気づいたらパソコンでメール打ってたりしちゃうんですよね。それで「ママ、これ聞いて」と子どもが言ってるのに「後でね」って言ったり、本当に聞いてなかったりすることも結構あって……。それだけが原因ではないとは思いますが、子どもの自己肯定感を下げてしまったかもしれないと反省しています。

いまは、週3日間は定時で仕事を切り上げて、子どもに向き合う時間を作っています。残り2日は夫に子どもたちを見てもらい、私は会社の電気が消える時間まで残業して仕事に集中していますが、メリハリがある生活ができていると思います。

(文:勝目麻希)


子ども発達支援アカデミーVARYでは、障害の診断の有無は関係なく、発達特性が気になる子を育てる親御さんが子どもとのかかわり方を学べる場を提供しています。現在VARYメンバーは海外含め全国各地から参加され100名を超えており、佑美先生から学べるのはもちろん、同じように悩む先輩ママたちの話も聞けます。また、発達特性があるからこそ親子で強みを見つけるアートプロジェクトが立ち上がるなど活動の幅も広がっています。佑美先生に直接お子さんの発達のことを相談したい方、お子さんの発達特性を活かす子育てをする仲間を作りたい方はぜひ入会をご検討ください。きっと発達特性を活かした子育てができるようになり、お子さんのことを大好きになれますよ。

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